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Holy and Bright

でもやっぱりさぁ、と事務員さんが言う。
何の変哲もないいつもの午後の事だった。

「居ると居ないじゃ大違いよね」

ぼくは気づかなかったけれど、周りが「そりゃそうだ」とガヤガヤしだしたので気づいたのだった。

ぼく:何の話?
事務員さん1:常務の話ですよ
事務員さん2:メールとかテレビ電話があるっていたって、ねぇ?
事務員さん3:ほんと。やっぱりそこにいてくれないと
ぼく:えー。みんなにお小遣いあげましょうか
一同:あははは


自分がそこにいないことで「寂しい」と言われるのは
記憶にある限りでは2回目だ。
最初は恋人の病床で、初めに入院してしばらく顔を合わすことができずに、
4日後に面会に行った日。満月の日だった。
まだ顔色も良かった恋人は、グレーのカーデガンを羽織っていて
面会室でぼくの腕を組んで「寂しかったわ」と耳元で囁いた。
ぼくは寒くないかと聞いた。
恋人はぼくの肩にもたれたまま
「すまない」とぼくも囁くように返事をした。


事務員さん3:パリのクリスマスってどんななんでしょうね
ぼく:あんまり変わらないですよ。シャンゼリゼに電球がたくさんついて、
この時期しか立たない市場みたいなのができてちょっとにぎやかになるくらいで。
事務員さん1:行ってみたいねぇ
事務員さん2:うちの旦那は大学の卒業旅行でパリ行ったんだって
事務員さんたち:へぇ!そういえばうちの旦那は・・・・


・・・と、いつもの調子が続いた。
そんな様子もぼくにはなんだか心地が良かった。


家に帰るとお隣のおばさんと長女さんが来ていて、
ぼくが買ってきたお土産のお礼をと、きなこ餅を持ってきてくれていた。
姪が給仕のように、湯呑をそーっと茶たくに乗せていた。

おばさん:がっちゃんも髪なんか染めちゃって
長女さん:うん、なんか別の人みたい
妹:これ、地毛なのよ。赤いと人にやいのやいの言われるから黒くしてるの。
おばさん&長女さん:えー!
姪:お茶が、入り、ましたよ(←そーっとお茶をみんなの前に出す)

フランスにいると周りが黒髪ばかりではないので気が楽だったりする。
初めのころは月に一度は染めに行ったりしたけれど
美容院の人いわく、ぼくの髪はきれいなイチジクのような色になるから
黒くしてはもったいない、持って生まれたものなのだから
両親も悲しむだろう、と。
それからは染めに行くことは無くなった。
イチジクかどうか知らないけれど、やはり髪は赤くなって、
でもそれをどうこう言われることはなく、そのうちにぼくもそんなことは気にならなくなった。
帰国してしばらくは、うちの事務員さんたちは
「また色気づいてきたよ、この子ってば」とさんざんにからかわれたけれど、
上記のいきさつを話してからはそんなこともぱったりとなくなってしまった。
ただ役目がら、取引先の人と会うことも多いので
はやりそのうちまた黒くしないといけないだろうとは思う。

12月の、クリスマスの空の下。
ただなんでもない日々も、それはきっと
亡くなった恋人と初めて会った日のように、
それが愛だと気付いた日のように、あるいはまた
ぼくに背を向けてベッドの中で泣いていたあの日のように、
名づけるとすれば、これもまた「幸せな日々」なのだろうと思う。
そんな夢見心地さえ、
地球上がただ一つの愛で満たされていくような、こんな季節にはふさわしいような気がしなくもない。













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