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ねことグラスと

まだあまり色づいていない街路樹の中に
たまに真っ赤に色づいている樹が混ざっているのはどういう訳だろう。
うちの庭の銀杏もところどころ黄色くなっているけれどまだ緑が多いし、
楓の葉も微妙にオレンジ色になってきている程度なのに。
気の早いのがいるのは生物に平等な性質なのだろうか。
そんなことを考えながら車のハンドルを握る。
隣に乗る姪がスピーカーから流れる音楽に合わせて鼻歌を歌う。
休日の午後はどの道路も混雑していて
景色をぼんやり見ているにはちょうど良い。

「お買いもの、行く?」

姪がたずねた。

「うん、ママも一緒にね」

妹は休日にも打ち合わせが入るような、そんな仕事をしている。
夕方近くに迎えに行くのがぼくの日課になっている。


忙しかったこの数週間、
ぼくはまともに家で食事をとらなかった。
時間が不規則だったので日に1度、外で何かを食べる生活だった。
それでも毎日アルコールは欠かさなかった。
ネクタイを外して家で仕事をしているときに
ウイスキーグラスを下げに来た妹が腕まくりをしているぼくをみて言った。

「あんまり食べないと、せっかくの筋肉もなくなっちゃうよ」

ぼくはワントウコツキンというのが発達しているらしい。
それがどの部分なのかぼくにはいまだにわからない。

「なに。死にやしねぇさ」

A3の書類を壁のあちこに貼り付け
付箋に書き込みをしたりピンを刺したりしながら朝を迎える日々だった。
人は誰でも誰かを守り、守られながら生きるはず。
妹と姪を守る意識は失くすことはないけれど
自分が守られていることならしょっちゅう忘れてしまう。
それを傲慢と呼ばずに何と呼ぼう。
葉を散らす越冬の準備を少しずつしている庭の木々に秋の朝日が当たる。
書斎の窓は西を向いている。


待ち合わせの場所で妹を拾う。
姪が伸び上って妹を見ている。
妹が車に乗るといつも「ごめんね」という。
姪はぼくの口調を真似して「なんの」という。
ぼくは一度も手間だとは思ったこともないけれど、
やっぱり「なんの」と答えてしまう。
帰りにスーパーに寄り、広い売り場をうろうろして、
今晩はシチューにすることにして野菜を買ったりお肉屋さんで量り売りをしてもらったり、
お茶屋さんでお茶の葉を買ったり、
花屋さんでいくつか花を買ったりして家に戻って来た。
ぼくは相変わらずソファーの左端で本を広げる。
姪は床のラグの上で絵本を広げており、
その周りでねこが横になったり姪と一緒に絵本を見たりしている。
キッチンからいい匂いがしてきたり、
考え事はいつか無くした夢のことだったり死んだ人間の事だったり、
フライング気味にあけたシャンパンでぼんやりとしてみる。
自分の気持ちなんかはどうにでもなれば良い。
そんなことを思う、やはり相変わらずの日曜の有様だった。












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