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里帰り

生活の拠点をパリに移してもうすぐ10か月になる。
早いなぁ、と思う。
季節の移ろいに気づくことに常に後悔がつきまとうこんな性格では
きっと地球上のどこにいても、どんな仕事をしていても、
あるいは仕事をしていなくたってきっと
ため息をついて時を惜しむくらいしかできないのだろう。
なんだろうなと思うけれど、致し方なし。


パリでは16区という地域で、一人で暮らすには少し広すぎる部屋に住んでいる。
妹や姪が遊びに来ることを想定していたけれど、
夏の終わりごろだったか、妹が「こっちに住もうかなあ」と言い出した時は
ほんの少しだけ、うれしくなったことを覚えている。
ミラボー橋を渡り、ブローニュの森にほど近いところで
少し歩けば凱旋門やエッフェル塔も近い。
観光地とはいえ夕方になればそれ相応に街は落ち着きを取り戻すし
買い物の帰りにセーヌ河岸をぶらぶらと歩いてくるにはちょうど良い距離にマーケットもある。
近くまで行くのにも車で行ってしまうようなぼくはといえば
そんな風景にもとうに飽きてしまっていた。
夏とはいえ、日陰にいれば暑さは気にならず、
家の中では七分袖のカットソーを着ていたくらいだった。
妹は通りで買ったレモネードを飲んでいた。
姪は妹のカメラであちらこちらを激写していた。
そのうちの一枚、ぼくの写真が妹のブログに載ったようで、
「なにこのイケメン」とコメント欄が騒然となったらしい。
ふふふ。ぼくもまだ大丈夫なんだろうか。 ←何が?
そして姪はずいぶんと大人びた様子になった。
ぼくが住んでいるところを「いいところね」と言う。
送った写真を見た妹がそんな風に言ったのだろう。
窓から見えるマロニエの並木道が黄色く色づく少し前の事だった。


夜更けにはアルコールでぼんやりする生活は変わっていない。
周りにいる仲間の顔と、飛び交う言葉が変わったにすぎず、
酔った頭で今頃日本は何時だろう、と考えることもなくなってしまった。
一度、大学の先輩が仕事でパリに来た時に食事をして
別れ際にキスをした。
ぼくたちは恋人同士というわけではないのだろうけれど
でも先輩はうちにいる間中、ずっとぼくの首にしがみついていた。
夕暮れがだいぶ過ぎたあたりだった。
セーヌのほとりにはそんなカップルはよくいるけれども
ぼくらのそれはありふれたロマンチックなものというより
どこか沈痛な、ただ時間が癒してくれることを待つことしかできないときのような、
そんな風だった。
仕事でなにかあったのだろう。生きていればそれだけ多くの毎日があるのだ。


多くの事は、時が過ぎさえすればどうにかなる。
どうにもならない事柄は、それはきっとどうにもしたくないその人の気持ちの問題で
だからずっと、時間が止まることを願うように取り留めもなく
過ぎてしまったどうにもならなことにその身を縛り付けるような身勝手さを
あるいは別の言葉で「祈り」と言ってみたりする。


ぼくは最近、ブランデーをよく飲むようになった。
いっきにおっさん化しているような気がして、なんだか悪い気がしなくもない。
パリに居たとて、日常がとくに変わることはなく
人間はしょせんその程度だと、妙な感慨に浸ったりしている。
そしていまは久しぶりに帰ってきた日本で、こんな風にブログを綴ったりしている。








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