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黄昏前後

妹が風邪をひいた。
熱があったようで赤い顔をしてフラフラとしていた。
そのため、お昼は姪と一緒にフレンチトーストを作り、
クリーニング店に行ったりスーパーに牛乳を買いに行ったり、
絵をかいたりピアノを弾いたりしていて夕方になった。
妹は食欲がない、と言った。

ぼく:お寿司でも食べに行こうか
姪:はい(´▽`)
妹:あたしも行く
ぼく:無理するなよ。お土産に買ってくるから
妹:だって回らないお寿司屋さんなんでしょ
ぼく:うん。回るところは大概混むから
妹:・・・
ぼく:すぐ戻るから寝てろよ
妹:・・・なんか風邪治った気がする
姪:わー(´▽`)
ぼく:・・・


というわけで3人で出かけた。
妹はよく食べていた。
海老のお味噌汁をおかわりしたり、塩辛の作り方を板前さんにしつこく尋ねたり、
女将さんと着物の帯の話をしたり終始楽しそうにしていた。
ほんとに風邪は治っているようにさえ感じた。
その帰り道、車の中にて。


ぼく:あ、バーゲンだって
妹:あぁ、そういう季節だもんねぇ
ぼく:なんか欲しいものはあるのかい
妹:あ、もしかして
ぼく:うん、ボーナス出たと思う
妹:「思う」って何よ
ぼく:支給日は覚えてないんだよ。お前知らないか
妹:今月まだ通帳記帳行ってないもん(※その辺は妹にお願いしてます)
じゃあ、もしかして
ぼく:うん、金額も知らない。けどたぶん2か月分だと思う
妹:お金のことちゃんとしないとだめよ?
ぼく:うん、ほんと
妹:・・・でね、夏用のワンピースなんか欲しいなぁって思うんですけど
ぼく:うん、了解
姪:りょうかい~



帰宅後、今度はぼくのほうがちょっと頭痛がしだした。
妹は買ってきた服を試着し、姪はあたらしい帽子を被って部屋の中を行ったり来たりしていた。
ねこが顔を洗うそばでぼくは足の爪を切った。
妹の風邪がこっちに来たろうか。
そんなことを考えながらとりあえずお風呂入ってビールを飲んで様子を見ようと思ったりした。










moonlight

ちょっとだけ疲れたような気がする。
明日から夜は会食の予定が続くので、
終業後にゆっくりできるのはもう少し先になるんだろうなと
先ほど自分のスケジュールを確認しながら何気なく溜息が出てしまった。
事務員さん達は会食なんてうらやましいと言うけれど
それがそうでもないんだな。
世間話だけならまだしも、国債がどうの金利がどうの、
外貨がどうとか果ては民主党だとか東電だとか、
稼働時間以外はまったく興味の対象にもならない話を
平均しても二回り以上年の違う相手と延々としなければならないのだ。
そして大概の場合において、相手よりぼくの方が知識があったりするものだから
話が返って長くなってしまう。
「当社では〇〇という見通しを持ってますがいかがでしょうかね」なんて
御社の会議でやってくださいとも言えるはずもなく、
リスクの分散ということでしたら・・・なんて正直に話をしてしまう。
兎角、大風呂敷を広げたがる人が相手だと困りもので
話したものを片っ端からビジネスにしようとするから相槌も簡単に打てやしない。
一度それでどこかの大学の客員教授にされかけたこともあり、
火消しに相当の労力が必要だった嫌な思い出があるのだ。

・・・考えれば考えるほどに気が重い。
愚痴なんてそんな重石みたいなものだというのは十分すぎるくらいに知っているはずなのに。
嫌なことばかり考えてしまうのは
やっぱりちょっと疲れているからなんだろう。










一番星の出るころに

午前中、教会に行った帰りに髪を切った。
夏みたいなこんな日にはちょうど良いような短さになった。
額の傷を隠す前髪を切るのはやっぱりちょっと躊躇するけれど、
でもやっぱり短くすると気分が良い。

妹と姪はどこかに出かけていた。
ぼくはランチのピロシキとグレープフルーツをたいらげて町内の公園へ行った。
相変わらず、誰もバスケットゴールは使ってはおらず、
ベンチにタオルと水を用意したら一人でボールを投げては走ったり飛んだりしていた。
途中、3人の親子連れがキャッチボールをしに公園に来ていた。
お父さんと5歳くらいの男の子とそのお母さんがしばらく公園にいた。
雲は多かったけれどところどころ青空も見えていて
梅雨らしいといえば梅雨らしく、夏といえば夏らしい具合だった。

始まりと終わりが決まっているならばその時間の中でスピードと言うものもある程度意味を持つのだろうが
永遠の中にその身を置けば、速度にはどれほどの意味があるだろう。
何も変わらず、何も変える気もなく、ただ過ぎる季節を嘆くだけの生き方にも
何らかの意味があるとは思えない。
全てが無駄ではないにしろ、なるべく妹と姪の実用に供することのできるようなものを
ぼくはこの世の中に残そう。
シューズの紐を結びなおしながらなんとなくそんなことを考えた。


公園にいた話だった。
たまにこちらに転がってくるやわらかい野球ボールを投げ返すうちに、
その親子連れと一言二言言葉を交わすようになった。
男の子は左腕でボールをなげるぼくがめずらしいようで、
わざとこちらにボールを投げてよこしたりした。
ボールを受け取った男の子がお父さんに駆け寄って、お母さんがぼくに軽く会釈をした。
ぼくのそばをセキレイがウロウロしていた。
梅雨のこんな時期にこんなに気持ちの良い陽気に思えたのも
それはそれで、今日という日の魔法なのかもしれない。












モノクローム

終業間際の午後8時ごろ、大学の先輩から電話が来た。
出先で体調が悪くなったとのことだったので
場所を聞いてすぐに迎えにいくと伝える。

事務員さん:あら、デート?
ぼく:違います。病人を家に送り届けるだけです
事務員さんたち:はいはいはい


先輩がいるという病院には15分くらいで到着した。
人気のない待合室で先輩は壁にもたれるように座っていた。

先輩:あら、早いのね
ぼく:大丈夫ですか?
先輩:いつもの貧血よ
ぼく:辛そうですね。立てますか?おんぶしましょうか?
先輩:どうせならお姫様抱っこがいい
ぼく:じゃあ荷物持ちますから
先輩:なんでそこスルーするかな


荷物を車に運び、歩くのも辛そうな先輩のことは
リクエスト通り背中とひざの裏を抱えて車に運ぶ。
誰かに見られていないか周りを注意深く観察しながらだったことは言うまでもない。


先輩:がっちゃんの手、オレンジの匂い?
ぼく:はい、さっき事務所のみんなでオレンジ食べてたんですよ。ちゃんと手洗ってから来たんですけど
先輩:良い会社ね
ぼく:もらい物はみんなで分けるのがお約束でして


先輩を家まで送り届け、何か困りごとがあったら連絡をもらえるようお願いして帰ってきた。
事情を話すと妹が言った。

妹:うちに連れて来ればよかったのに。あたしもいるし、
  いざとなったらお隣のおばさんとかおばあさんもいるんだし。どうせ部屋も空いてるんだし。
ぼく:そか。迎えに行った方がいいかな
妹:もう寝てるんじゃない。気使わなきゃだめじゃない
ぼく:うん


なんだか猛烈に心配になってきたので、先輩にメールを送ってみた。
食欲は出てきたか、寝ながら体を冷やさないようにちゃんと着てるか、
薬は飲んだか、いろいろ聞いてみたけれどまだ先輩から返事がない。
妹の言うとおりうちに連れて来ればよかった。
何をするにもぼくは手際も悪くて気もきかない。
何かあったらまずは妹に相談すべきだったのだ。
今度からはちゃんと妹に聞いてからするようにしよう。













somebody

妹と姪が保育園のみなさんと朝から出かけている。
ぼくはちゃんとした食事もとらずにお酒も飲まずに、
アイスばかり食べていた。
迎えに来いと連絡があればいつでも出動できる態勢だったけれど
夕方妹から電話にて「帰りは送ってもらえるから大丈夫よ」と連絡があり、
ぼくはねこに見守られながら乾いた洗濯物のタオルをたたんだ。
「先に食べなくてよかった」と、
ダイニングテーブルの上の、ハガキを出しに行ったついでに買ってきたオレンジのパイを見ながら思った。


先日、某会社の社長と会食をした時のこと。
「うちの○○(社長さんの秘書の方)が、○○さん(ぼくのこと)には色仕掛けが通じないってこぼしてましたよ」
と豪快に笑っていた。
ぼくには全く身に覚えがなかったがうちの秘書に聞いてみると
「えぇ、ものすごいあからさまだったじゃないですか」とのこと。

事務員さん1:そんなに?
秘書:はい。おっぱい半分くらい出てて、やたらと近いんですよ、距離が。
   胸がちょっと腕に触れるくらいの近距離でしたね。
   で、腕とか肩とか、タッチがあって、これがまた。
事務員さん2:で、この人(ぼくのこと)は?
秘書:ごま豆腐がおいしいおいしいって
一同:あはははははは
ぼく:(´・ω・`)
事務員さん1:もったいないことしたね
ぼく:えぇ。そうとわかってれば持ち帰ったものを
事務員さんたち:ないないない
秘書:あそこまで大胆なの気づかない時点で・・・
一同:あははははは
ぼく:(´・ω・`)



あのごま豆腐のお店のことか。
もったいないことしたな( ̄ー ̄)
でもあのごま豆腐、ほんとにおいしかったんだよな。
(やっぱり豆腐ばっかり)





spice fellow

眠るときはいつもぼくの右腕に頭を乗せて、
ぼくの体に手を廻してしがみつくように恋人は眠った。
いつでも眠れないぼくは恋人の寝息を聞きながら、
いつかこんな眠れない夜のために
瞬く星を、穏やかな月の光を、夜に見える雲を眺めるために、
天窓のある家を建てようなんて、テレビもないアパートの部屋で考えていた。

早く迎えに来ておくれ。
一人だけ歳も取らずにきれいなままなんて不公平にもほどがある。


・・・と、煙草の灰が落ちる気配で我に返る。
疲れているときにだけ思い出すことがあり、
そんな時は目を開いていても何も見えていないし何も聞こえていない。
傍から見れば窓の向こうの景色に見とれているように見えるそうだ。
喫煙室にて、初夏の陽気を思う頃。


さて、株主総会が終わるまでもうひと踏ん張りしなければ。












daydream

暑かったり寒かったり、
突然強い雨が降ってきたと思えば抜けるように晴れてみたり、
とは言え並木に芽吹いたその緑だけ、なんだか青々と張り切りだしているようで
この何週間かは春の終わりを告げるに十分な騒々しさだったと思う。

会社帰りにコーヒーを飲みに行くこと。
窓の向こうの街の灯に見とれてしまうこと。
夜風に散る花びらに気付かないでいること。
心だけどこかに行ってしまいそうになること。
なんとなく青空の夢を見ること。


この頃はお風呂に浸かりながら寝入りそうになることが多くなった。
気をつけねば。












傷の痛みの忘れるころに

母の日なので、今日は少し早起きをした。
いつもはぼくが起きるともう妹は起きていて
歯を磨いてシャワーをすますとコーヒーの支度が出来ていたり、
パンの一片とジャムとヨーグルトがダイニングに用意してあったり、
夜は夜でぼくが帰るまで妹はいつも起きていてくれるし、
お酒ばかり飲むぼくのために栄養学をこっそりと勉強したりしていたし、
その上、妹には母親としての顔もあり、妹には妹の会社勤めがあり、
いやどちらかといえばその顔のほうが妹にとっては重要であるはずなのに、
手のかかる兄のせいで妹はきっと休まる時間がない。
だからせめて今日くらいは、
朝のコーヒーの支度をして妹が起きてくるのを待っていようと思い、
いつもより早めの目ざましもアラームがなる少し前に解除して、
足音をたてないように廊下を歩いて、
足にまとわりつく猫もなんとなく状況を察したのか、
朝食催促の「にゃー」も心なしか小さめの声でぼくの前後を行ったり来たりし、
ぼくはぼくで泥棒みたいにこそこそとしているとどこか様子が変なことに気付いた。


・・・キッチンから音がする・・・・


もしやと思いキッチンを覗くとそこにはすでに妹の姿が。
しかもダイニングテーブルで折り紙にいそしむ姪の姿まで。
休日の、まだ午前6時少し前だというのに。
やがて妹に気付かれる。


妹:あれ、早いね。うるさかった?
姪:おはよー(´▽`)
ぼく:や、偶然目が覚めて(←動揺のため日本語がおかしい)
妹:へぇ。また寝る?
ぼく:ううん、せっかく早く起きたから顔でも洗うよ。

歯を磨いてシャワーを浴びて出てくると
いつものようにテーブルにコーヒーの支度がしてあり、
キッチンはとても良い匂いがした。妹はキッシュを作っているのだと言った。

妹:天気がよさそうだからお兄ちゃん早く起こしてどこか連れて行ってもらおうと思って
姪:お出かけする?
妹:うん、お兄ちゃんが連れて行ってくれるって
姪:わー(´▽`)
ぼく:うん、ちょっと行きたいところがあったからちょうど良いね
妹:どこ?
ぼく:美術館。軽井沢の
妹:わー
姪:わー(´▽`)


結局、早起きして妹に朝をのんびりと過ごしてもらう作戦は失敗だった。
どうしたものかなと考えながらコーヒーをすすった。
姪は保育園で母の日の似顔絵とメッセージカードを作ったようだった。
そこでぼくも、妹に手紙を書こうと思った。
去年、父の日に妹がぼくに手紙をくれたように。

「いつでも優しくて、時に父親のように、時に恋人のよう」だと書いてあって妙に照れたことを思い出す。
ならばぼくも、妹が照れて真っ赤になるような手紙を書こう。
そんな手紙は書くほうにだって勇気がいるけれど今日は母の日なのだ。
気持のすべてが感謝に変わる魔法のような一日は、まだあと4時間弱残っているのだから。










グラスの水に氷の浮かぶ

先日まで出張でパリとニューヨークを行ったり来たりしており
帰ってからもなんだかんだとやぼ用が続いてゆっくりできる時間がなかった。
久々の休日なので今日は朝からちびりちびりとワインを飲んでいた。
どんよりとした空の下、縁側に椅子を出して本を読んだりぼんやりしたり
のんびりしすぎてなんだか体がだるくなった気さえする一日だった。



妹が雑誌の懸賞で当てたお弁当箱は
ごはんとお味噌汁の容器のほかにさらに3つの容器からなる豪勢なもので
朝、シャワーを浴びて出てくるとダイニングに準備ができているので
最近は毎日お弁当を持って出勤している。
仕事柄、お昼は誰かとランチのアポが入る事が多いのだけれど
妹がまいにち一生懸命に作ってくれ、
ごはんとお味噌汁(日によってスープの時もある)のほかの容器には
妹いわく「メインのおかず、野菜、フルーツとなっております」ということになっており、
なんとフルーツのゾーン(?)は姪がりんごやオレンジを詰めてくれることもあるというので
ワーキングランチは断ってでも、あるいはすっぽかしてでも
ぼくはお弁当の時間を死守する必要がある。
そんなわけで、秘書にはあまりランチのアポを受けないようお願いをしている。


お弁当持参の初日のこと。

秘書:ランチのアポ、やんわり断っておきましたよ
ぼく:うん
事務員さん1:あらもったいない
秘書:お弁当ありますから
ぼく:(お弁当を取り出して広げる)
事務員さん2:あら!?
事務員さん3:あら!?
事務員さん1:○○ちゃん(※秘書のこと)お手製?
秘書:え?
事務員さん2:うん、いま「私が作ったお弁当あるでしょ」的な雰囲気だったわよ
事務員さん3:うん、「ランチに出る必要ないでしょ」的な感じだった
事務員さん1:やっぱりあなたたち・・・
ぼく:そんな・・・これは妹が(;´Д`)
秘書:えぇ、実は・・・
ぼく:乗んないでよ!
ぼく以外の一同:あはははははは


最近秘書はこの手の悪乗りの腕をあげているように思う。











just off the boat

いつもみたいに何の予定もない日曜は
図書館に本を返しに行ってまた新しいのを何冊か借りる。
ポケットに忍ばせた指輪をはめて教会に行って
フレンチのお店で白身魚と野菜のスープでおなかを満たして
「夜桜でも見に行きませんか」と大学の先輩を誘ったら
見上げる空に桜の枝がよく映える。

「ごめん今日仕事なの。明日は?」と先輩から返事があって
添付の写真は仕事中の先輩の姿がそこにあって
ぼくは「お仕事中にすみません。またにしましょう」と返事を返す。
すぐに先輩から「明日18時に○○の前で!」と返信があって、
「はい。お仕事がんばって」とすぐに返信をする。


ぼくはあと何回桜が見られるだろう。
そんなことを考えながら少し早めに家に帰ってきた。
妹たちもまだ帰ってはなくて
きっちんでやかんを火にかけてダイニングテーブルでいちごを食べる。
家の中を照らす夕方の日差しが今までより少し高くなっている気がして
季節の移ろいは優秀な執事に似ているな、などと考えてみる。
何の予定もない日曜日。
「おやすみメインの王子たち。ニューイングランドの王たちよ」
いつか見た映画のセリフを思い出したりしながら時折やかんを眺めていちごをほおばる。
日曜はいつもみたいに、ただ何事もなく。












春のよそほひ

妹の買い物に付き合うため、今日は朝早くから出かけた。
コートやら靴やらを探しにお店を何軒かはしごし、
ぼくは終始姪と一緒に適当な鼻歌をうたったり、たい焼きを分け合ったり、
ガラスに散る雨粒を数えたりしていた。

不意に妹の言う。
「お兄ちゃんもなんか服買ったら。部屋着にするようなやつ」


うむ。
確かにぼくは家でスウェットの類は着ることがない。
家にいるときはだいたいデニムにカットソーに、寒かったらカーディガンとか、
地味すぎておしゃれとは無縁な感じだ。
(ちなみに足元はスリッパ代わりの布の草履。)

というわけで自分の服も何か買おうと商品を見ていて気がついた。
「おしゃれな格好をしたとして、それで、どうするんだ、自分」
日々は会社と家の往復に費やし、休みの日に外出することがあるとはいえ
スーパーやドラッグストアや花屋さんやガソリンスタンドや教会くらいしか行くところがないではないか。
それにたまに大学の先輩と休日に出かけることがあるにせよ、
「小奇麗なかっこしてる」とは言われることはあれ、ダサイといわれたことは今のところはないのだ。

・・・単に気を使ってもらっているだけかもしれないのだけれど(TーT)


自分は、おしゃれをして何を目指す?
その自問の重圧に耐え切れず、
洋服ではなくソファにおくクッションをいくつか買って買い物は終了した。
我ながら意気地なしだと思う。












飛行機雲

夢の中でしか会えないのだからこそ
さよならは言わないでほしい。

そんな気持ちで目を覚ます、日曜の朝。












春の景色

レストランでワインだけを注文するというのもなんだかお店に失礼な気がするので
「食べ物は軽めのものを」とお願いしたところ、
きれいな緑色のチャルソンスが出てきた。
黙ってメニューに載っていたアスパラのサラダを注文しておけばよかったと
猛烈に後悔しながらフォークを動かした。
そもそも、ワインが飲みたいだけならレストランに入る必要は無いのだけれど
窓から見える景色の良いお店なのでしょうがなかった。

重めの赤ワインでぼんやりとして外を眺める。
周りで煙草を吸っている人がいないので煙草はずっとポケットの中。
カウンター席の、二つ隣に座っていた女性に声をかけられる。


女性:ご一緒させていただいて良いですか?
ぼく:はい、どうぞ


そんな感じだった。
女性はずいぶん若く見えた。
でも着ていたスーツや持っていたコートはしっかりしたものだったし、
かけていためがねは高価なものであるらしいことはすぐに気がついた。
なんなんだろうと思ったけれど話くらいなら構わないし
何か買わされそうになったら退散しようと思いつつ、
別の銘柄のワインを注文する。


女性:ワインお好きなんですね
ぼく:ほんとはよく分からないんです。ワインはお腹もふくれるし安上がりですし
女性:面白い方(とクスクスと笑う)


「安上がり」といったことが「面白い」というのなら、と考えた。
この女性はぼくが注文したワインの銘柄から価値を計れる素養がある人だ、と思った。
ぼくが頼んだワインは安くなかった。
単に女性がメニューを見ていただけかもしれないけれど。
その女性はたぶんシェリーを飲んでいた。グラスの大きさや中身の色でそんなふうに思った。


ぼく:ワインは酔わないですからね、いくら飲んでも
女性:そんなことないですよ。私、お酒好きなのに弱くて、3杯くらいで酔ってしまうんです
ぼく:あ・・・
女性:はい、思い出して頂けました?(笑)


その女性はだいぶ前にしたお見合い(といっても社命のようなもの)相手のお姉さんだった。
お見合後に何度か食事をして、お姉さんも同席したことがあった。
その時に「お酒が好きなのに弱くて、3杯くらいで酔ってしまうんです」と口にしたことを覚えていた。
そういえば職場が近い、ということを話した記憶もあった。
知っているお店も共通したところが多くて、
どこかでお会いするかもしれないですね、なんて話をしたこともあった。


ぼく:失礼しました。油断しててぜんぜん気づきませんで・・・
女性:いえ、ご無沙汰ですもの。・・・ナンパだと思いました?(笑)
ぼく:・・・いえ、なにか買わされるんだろうと
女性:あはははは。やっぱり○○さん(※ぼくのこと)面白い
ぼく:(お恥ずかしい限りです、というのを心の中でつぶやきながら無言)


お姉さんは休日の前なのにデートの相手もいないのが癪でお酒を飲んで帰るところだったとのこと。
ぼくはぼくで、ただ景色を見ながら飲みたかっただけ、と話した。
それからしばらく話をして、お姉さんがタクシーに乗るのを見届けた。
「妹が『ふられた』ってしばらく落ち込んでたんですよ」とお姉さんは言った。
ぼくはただ謝って、たまたま、タイミングというか雰囲気が合わなかったと言いますかなどと
自分でもよくわからない言い訳を手当たり次第に並べてみた。
お姉さんは終始にこにことしていた。
そんな様子がなんだか余計にいたたまれない気持ちにさせた。
休日の前の日のこと。
世の中は広そうで意外とそうでもない、という話。












笑みの浮かぶ横顔

良い事も悪い事もあるのが生きているということなのだとは分かっている。
悪いことの大半が自分のせいだということもちゃんと知っている。
嫌われることにも慣れていたし、
世の中に避けられる前に自分から世の中を避けていたことが
かえって自分の居場所を狭めていたことだって。
だからこそぼくはできることだけには精一杯のことをした。
大事なものは大事だと照れずに認めていたし
何もなくさないように、かけがえがないなら全力で大事にした。
それでも芽吹く若葉が花びらを散らすように
鮮やかな夢の名残だけが残るように
そこにどんな意思があろうと無意識だろうと
大事なものだけが遠くに行くのが春なのだ。
ただそこに花が咲きほころぶ、春とはそういう季節なのだ。












いずれ暮れ行くこの一日のように

どんなに疲れていても眠剤の力がないと眠れないのは
これはもう何かの呪いなんじゃないかと思う。

ある占い師さん(※洗脳とかしない普通の占い師さん)は
ぼくの前世は大悪党だと言った。
ある神父さんは親の罪は子が背負うと言った。

いずれにしても。
自分を含めぼくの周りは変なやつばかりだったから
ぼくは今おかしな呪いに苦しむはめになっているのだろう。



自業自得って世代を巡って戻ってきたりするのだろうか。
考えるほどに、自分が一番悪いような気になってくるから不思議だ。



前世が。
(そもそもその占いの信憑性はどうなのか)



親が。
(顔も見たことねえぞ)



結局自分か。
(思い当たるフシ多々あり)




・・・チーン。














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